インターネット地域メディア「オホーツク島」とその制作活動

 

この展示は、1990年ごろに日本のある地方で生まれたひとりの若者が、あるウェブメディアをつくった、という架空の物語を記したものである。ただ実際にウェブメディアは存在しており、そのメディアによって、ある地方にポジティブな変化が起きている。

一見乱雑に散らばった無数の情報をたどると、活動の全体像と、架空の若者の人物像が浮かび上がる。それらは切っても切り離せないものであるが、大きな課題を抱えた地域において、その課題に解決が解決するならば、それを推進しているのが誰であるのかは、どうでもよいことである。
この作品は、対話を目指すライブパフォーマンスである。都市と地方、インターネット以前世代と以降世代、健常者と障害者、高所得者と低所得者、故郷を愛するものとそうでないもの、保守と革新、アートとデザイン、社会善とお金稼ぎ、など、この作品を見るすべての人が、立場の対立を越えて真の問題と向き合い、議論すること、議論を生み出すことを目的としている。

時期

2017年2月23日-26日 @ IAMAS 2017

背景

  • 作者のさのは北海道のオホーツク海側地域、遠軽町という田舎町の出身である。
  • いわゆる「地域おこし」と捉えられるような活動を行っているが、故郷に愛着を持って、というよりも、地方で誰にも理解してもらえない少年期を過ごしたことや、自分を育ててくれた祖父母に対する恩返しの必要性などを感じながら故郷を離れて暮らさざるをえない現状において、あくまで自分のために、自主的にできることに取り組んでいる。
  • しかし他人から見ると「よくわからないけど『地域愛』を持って」「よくわからないけど『地域おこし』してるんだね」としか見られない現状があることに気がついた。
  • これはアイデンティティの問題であり、万人に共通する問題であり、万人に共通する活動意識である、と作者は考えている。

目的

特定の地域で起こした、境界をまたぐための具体的な事象を通じて、たとえ特定の地域に一切関係がなかったとしても、なんとかして個人に投影可能な形にして対話を起こし、あらゆる境界をまたいだ思考や行動を励起する。

手法

論理的に整理された、客観的に理解できる内容をパネルや地図で完全に説明するとともに、客観視点を乗り越えるために可能な限り個人の属性や経験、人間関係や思念をさらけ出す。そうした個人の属性や経験、人間関係や思念を通じて、客観的に捉えようとしている人々の内面に働きかけ、何らかの形で共感(あるいは反感)を得て、議論や新たな行動を発生させることを狙う。

使用したメディア

  • iMac 1台
  • iPad 5台
  • インクジェットプリンター
  • 本 100冊程度
  • チラシ
  • 新聞
  • その他印刷物(奨学金借入証明書、源泉徴収票など)
  • 大判印刷
    • 地図
    • プロジェクト概要パネル
  • 印刷
    • 論文
    • インタビュー結果まとめ
    • 掲示物 100枚以上
  • 手書きメモ 1000枚以上書き溜めたうちの50枚程度
  • 人間 1人(さのかずや)

制作

まず正面には、このプロジェクト全体の象徴としての論文が展示されている。90ページの論文にはこのプロジェクトに関するすべてが記載されている。

その後ろ、展示の中心部には、プロジェクトの対象となる地域である北海道オホーツク海側地域の地図と、各地に散らばるプレイヤーの情報を記載し、それぞれの関係をマーカーの手書きで掲載している。これによって、全くの他人から見ても多くのプレイヤーが連動しているこの地域の状況が見て取れるようになる。

その周囲には、正面左から右にぐるっと廻るように、さまざまな展示物が掲示してある。この展示のストーリーと、一般的に納得がいくようなプロジェクトの説明、経過、得られた反応、今後の方針などのまとめは、大判印刷してパネルで掲示した。これによって閲覧者にとって展示全体の流れが把握できるようにした。

中心部にはこのプロジェクトの中心となるウェブサイトが閲覧できるようになっており、並んでいるタブレットでは各SNSアカウントも閲覧できるようになっている。

その周囲には、過去のメモや個人の属性、SNSの投稿やメッセージ、ニュースやロゴ、参考にした本や新聞、雑誌、チラシなどのメディアを掲示したり並べたりすることにより、展示の流れに沿った二次的な情報で客観性を減らし、個人が投影されやすい状況を制作した。

周囲の二次的な情報は、展示エリア内に設置されたプリンターによって展示期間中に常にアップデートされ、展示期間中に現場で発生したインタラクションやインターネット上の反響、それに対する作者のリアクションなども含めてアップデートされ続ける。

備考

設置していた修士論文はこちら

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